第299章 少し冷静になりましょう

 千謙は前方の人物を追うことばかりに気を取られ、足元への注意が疎かになっていた。

 そのまま地面に倒れ込み、くぐもった呻き声を上げた。

 その声を聞きつけた檸檬は振り返り、千謙が倒れているのを目にすると、慌てて駆け寄り彼を支え起こした。

「大丈夫?」

 檸檬は千謙の腕から出血しているのに気づいた。

「救急箱、取ってくる」

 そう言いかけた彼女の手を、千謙は咄嗟に掴んだ。薄い唇を固く結び、

「行くな」

 檸檬は俯く。

「まずは止血しないと」

「一緒に行く」

 千謙は立ち上がると、檸檬と共に外へ向かった。

 一部始終を見ていたジムのオーナーが、千謙の怪我に気づき、慌てて駆け寄ってきた。

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