第361章 聞くけど、顔を打たれて痛たくないか?

詩織の瞳から、温度が急速に失われていった。

そこへ沙奈が歩み寄り、悔しさを滲ませた声で訴える。

「お姉ちゃん、あの檸檬って女、見た? あんなに偉そうにして……。なんであいつが、篠崎の若様の隣になんか座ってるのよ!」

「黙って。わかってるわ」

詩織は苛立ちを隠すように、荒々しく自分の席に戻った。最前列に座る千謙の背中を見つめる。背後からは、彼の容姿や財力を称賛する女子生徒たちの話し声が聞こえてくる。

あの日、母から聞かされた言葉を思い出し、詩織の瞳の奥に暗い笑みが浮かんだ。

そう、焦る必要はない。

篠崎家が檸檬の両親を死に追いやった——その事実は、彼女にとって最高の切り札だった。

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