第513章 彼は炎の中から来る

檸檬にとって、火にまつわる記憶はろくなものではない。

檸檬は詩乃と果歩を叩き起こすと、すぐさま廊下へ飛び出し、非常ベルを力任せに叩いた。その瞬間、耳を劈くような鋭い警報音が、寮全体に響き渡る。

果歩が濡れタオルを手に、詩乃を支えながら部屋から出てきた。彼女は檸檬にも一枚のタオルを差し出す。

「逃げるよ!」

檸檬はタオルを受け取りつつ、首を横に振った。

「果歩は詩乃ちゃんを連れて先に逃げて。私は各部屋を回って声をかけるから」

「そんな、危ないよ!」

「早く行って。引き際くらいわきまえているわ」

檸檬は踵を返すと、手当たり次第にドアを叩いて回った。まだ気づいていない人がいるはずだ。

彼女は...

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