第538章 道徳の押し付けなどクソ食らえ

千謙の言葉を耳にした瞬間、檸檬の目頭が熱くなった。

この世界で、彼以外に誰が理解してくれるだろうか。言葉にできないこの胸の痛みを、誰にも言えないやるせなさを。

先ほどの西都の言葉は、一見すれば何の問題もないように思えた。

だが、檸檬は生理的な嫌悪感を覚えたのだ。

その違和感の正体を、千謙だけが瞬時に見抜いていた。

西都は必死に平静を保っている表情で檸檬を見つめた。

「檸檬、違うんだ。そんなつもりじゃなかった。後になって、恩着せがましく言うつもりなんて……」

千謙は西都の胸倉を掴み上げた。

「檸檬のためにやってやる、という思い上がりがなかったと本気で言えるのか?」

西都は押し黙った...

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