第582章 でも今はもっと君が欲しい

檸檬は顔を上げ、千謙と視線を絡ませる。

男は頭を垂れて彼女に口づけ、手を伸ばして車内のパーティションを上昇させた。これで運転席と後部座席は完全に隔絶される。

檸檬は一瞬目を丸くしたが、結局彼を拒むことはなかった。

窓の外は初冬の寒気が支配しているが、車内は甘やかな熱に満ちている。

互いに息を弾ませて唇を離す。檸檬が彼の懐に身を預けると、力強い鼓動が耳に伝わってきた。

「今は、こっちがしたい」

千謙の枯れたような低い声。檸檬は彼の脇腹を指先でつついた。

「車には、まだ人がいるんですよ」

パーティションで仕切られているとはいえ、防音ではない。これでは『頭隠して尻隠さず』もいいところ...

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