第588章 今回の彼女の身分は社長夫人

檸檬は、何度考えても胸の奥のざらつきを拭えずにいた。

もし今日、その場にいたのが他の誰かであったなら、檸檬も素直に感動していただろう。かつて彼女自身も、あのように母親に車から抱き上げられ、命を救われた経験があるからだ。

けれど、相手があの英子という顔を持つ人間だったから、感動などできなかったのかもしれない。

英子もまた、我が子を救うために必死だった。

極限状態に置かれた母親ならば、誰もが同じ選択をするのかもしれない。

ただ、その顔があまりにも……檸檬にとっては受け入れがたいものであり、感情移入どころか、むしろ警戒心が鎌首をもたげてくるのだった。

簡易ベッドに身を横たえ、天井を見上げる...

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