第605章 最も幸せな瞬間に深淵へ墜ちる

ふと、檸檬の胸に好奇心が過った。

彼女は口を開く。

「それで、彼は何と言ったのですか?」

「『好きな女の子ができた』って。その時、私は本当に彼のことを嬉しく思ったわ。……まさかその相手が貴女だとは、思いもしなかったけれど」

檸檬は呆気にとられた。

「その時すでに、お祖母様に話していたのですか?」

「ええ。私や彼の母親が反対することを知っていながら、それでもあの子はそうしたのよ」

篠崎家のお祖母様が、檸檬の手を優しく取る。

「その後、病院で貴女を見た時、良い子だと分かったわ。でも、私は悪役になって二人を引き離すしかなかった。……あの時、貴女も辛かったでしょう?」

「はい、正直辛かった...

ログインして続きを読む