第607章 裏切りは静かに起きた

檸檬は一人、階段に腰を下ろしていた。あたりは深い闇に包まれている。

詩乃との出会いを思い出し、胸が締め付けられるようで、息ができなかった。

しばらくして、千謙がやってくると、彼女の隣に腰を下ろした。

彼は手を伸ばして檸檬を抱き寄せ、低く落ち着いた声で言った。

「詩乃は助かる。大丈夫だ」

張り詰めていた糸が切れたように、檸檬は声を上げて泣き出した。この現実を受け入れることができなかった。今日会ったばかりなのに、夜には集中治療室で生死の境をさまよっているなんて。

千謙は彼女の悲痛な泣き声を聞き、心臓を強く鷲掴みにされたような痛みを覚えた。

檸檬は長い間泣き続け、やがて喉が痛み始めるほ...

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