第620章 なぜ逃げる、食われるのが怖いか?

檸檬は千謙の胸に寄りかかり、自らその首に腕を回した。

実のところ、彼女も彼に会いたくてたまらなかったのだ。

檸檬が顔を赤らめ、息を切らしたところでようやく男は動きを止める。名残惜しそうに唇の端に触れながら、千謙は少しかすれた声で尋ねた。

「今夜、予定は?」

「特にないけど」

そう答えた直後、千謙の瞳の色が濃くなったのを檸檬は見逃さなかった。瞬時に彼の意図を悟り、慌ててその腕の中から逃げ出そうとする。

だが、男の方が一枚上手だった。腰をしっかりとホールドされ、耳元に噛みつくように唇を寄せられる。

「どこへ行く。俺に食われるのが怖いのか」

首筋にかかる熱い吐息に、檸檬の心臓が跳ねる...

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