第632章 湘子が狂った

英子は秘書を伴い、急ぎ足で精神科病院へと向かった。

屋上には、患者衣を纏った女が一人佇み、何もない虚空に向かって語りかけている。

「檸檬、どうして私を陥れるの? あなたが私を嵌めたんでしょう。私が大学入学共通テストで首席を取ったのが妬ましいからって、お兄様たちを使って私を破滅させたのね」

虚空を見つめる湘子の顔には、不当な扱いを受けたという悔しさと無念さが滲んでいる。

英子は屋上へ踏み入ると、傍らの医師を睨みつけた。

「どういうこと?」

「治療は順調に進んでいたのですが……職員が見ていた芸能ニュースで、檸檬と篠崎家の御曹司が婚約間近だと報じられたのを目にしてしまい、突然錯乱状態に陥っ...

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