第652章 猫をかぶった女にも、まだ利用価値がある

「逃げた?」

千謙はその言葉を耳にするや、スマホをスピーカーモードに切り替え、畳みかけるように問いただした。「逃げたとはどういうことだ? あいつは病気のはずだろう」

「ええ。正月に一度暴れたらしいけれど、英子が来てからは医師に強制措置を取らせて閉じ込めていたわ。でも、病院からの連絡によると、姿を消したそうよ」

檸檬は正直、予想外だった。あの猫をかぶった女が、まさかあんな場所から抜け出してくるとは。

前世の彼女自身でさえ、逃げ出すことはできなかったのに。

もっとも、湘子の置かれた状況は、前世の自分よりずっと恵まれている。かつての檸檬は病院に捨て置かれたようなものだったが、湘子は治療とい...

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