第675章 ついに演技をやめたか

英子は立ち上がり、詩乃を睨みつけた。

「勘違いしないで。その財産は本来、貴女の弟のものよ。貴女に受け取る資格なんてないわ」

「笑わせないでください。まさかお父様がボケてしまって、私に遺産を譲ったとでも?」

詩乃はもう、猫を被るのをやめた。これ以上、従順なふりをして演技を続けるのは疲れる。

どうせ昨夜は二人とも一睡もせず、事態に備えていたのだ。

今、中村家には陽太が手配した護衛が配置され、屋敷の外には始末屋が目を光らせている。彼女の安全は確保されていた。

「あの男は詐欺師よ。息子に全てを譲ると言っていたのに、裏切った。私たち親子を捨てたのよ。あんな男、死んで清々したわ」

英子は長年の鬱憤...

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