第687章 お前は私の手を汚すに値しない

千謙の名を耳にした瞬間、檸檬は弾かれたように顔を上げた。視線の先、入り口にその男はいた。

車椅子に深く腰掛け、病衣を身に纏い、顔色は依然として紙のように白い。

その姿を見た途端、檸檬の喉の奥が熱くなり、嗚咽がこみ上げた。

どうして、ここに来たの。

まだ目覚めるはずがなかった。それなのに彼は意識を取り戻し、あまつさえ彼女を救うために兵隊を引き連れて現れたのだ。

陽太もまた、千謙の姿を認めると、張り詰めていた肩の力を一気に抜いた。

千謙の登場によって、場の空気は一変した。

英子は逃走を図ったが、追っ手は容赦なかった。脚を撃ち抜かれ、悲鳴と共に無様に机の陰へと転がり込む。

まさかこの...

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