第711章 彼が失った少女

その場にいる全員の視線が、ボディガードに集中する。

やがて、男は無念そうに首を横に振った。

「若奥様の痕跡は、発見できませんでした」

中村詩乃はぎゅっと瞳を閉じた。手にしていた軽食への欲求など、瞬く間に消え失せる。胃の腑が鉛のように重く、何も受け付けない。

彼女は一縷の望みを抱いていたのだ。高坂檸檬は本当にこの場所に匿われているのではないか、と。

だが、現実は非情だった。高坂檸檬の姿は、ここにはない。

高坂東弥は密かに安堵の息を吐いた。だが同時に、胸中に疑問が渦巻く。高坂檸檬は、確かに自分がこの高坂家の別荘へ送り届けたはずではなかったか?

一体いつの間に、連れ出されたというのか。...

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