第766章 彼の生活は澱んだ水

二年後、雲雀市空港。

「おにいたん、お人形おちちゃったぁ。ううっ、お人形ぉ……」

「たくっ、馬鹿か。誰が人形なんて持ってこいって言ったよ。俺たちはこっそり抜け出してきたんだぞ、わかってんのか?」

彫刻のように整った顔立ちをした美少年が、厳しい表情を崩さずに言う。

その隣には、ピンクのワンピースを着た少女。愛らしい瞳に涙を溜め、今にも泣き出しそうな可哀想な様子で立っている。

「人形は探さない。お前を家に送り返すぞ」

少女はダンと足を踏み鳴らした。

「おにいたんのバカ! もう知らない!」

少女はぷいと顔を背けると、短い足を必死に動かして走り出した。

折悪しく、次の到着便から大勢の客...

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