第768章 高坂檸檬に敵う者はいない

篠崎千謙は、目の前にずらりと並んだ美女たちを一瞥した。

やがて、彼は適当に一人を指差す。

「お前でいい」

傍らに控えていた秘書は、指名されたその女の目元を見て、心の中で密かに溜息をついた。やはりか、と。

ボスはこの数年、苦悩に苛まれ記憶も曖昧になりつつある。

だが無意識のうちに、どうしても『あの人』の面影を追い求めてしまっているのだ。

選ばれた女は驚いた表情を見せた。自分はこの中で一番の美人でもなければ、スタイルが抜群というわけでもないからだ。

だが、すぐに歓喜の表情を浮かべると、篠崎千謙の隣に滑り込み、猫なで声で言った。

「篠崎様、お酌をさせていただきますわ」

選ばれなかっ...

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