第826章 随分と演技がうまいな

高坂檸檬は一歩も引かずに彼を見据えた。

「それなら、篠崎様も一芝居打ってはいかがですか」

「俺は芝居なんぞ好まん」

篠崎千謙は彼女を見下ろすように言った。

「それに、あんたが死んだら娘の面倒は俺が見てやる」

高坂檸檬はむっとした表情を浮かべる。

「私の娘の世話なんて、あなたには頼みません」

彼女がエステサロンを出ると、横にいた男が近づいてきた。

「乗れ」

今回ばかりは高坂檸檬も拒否しなかった。車に乗り込むなり、彼女は即座に告げる。

「自宅へお願いします。休憩したいんです。誘拐騒ぎでショックを受けたので」

篠崎千謙はシートに深く身を預けたまま言った。

「会社だ」

高坂檸...

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