第883章 この高坂檸檬は様子がおかしい

「これからのことなんて……。何もかも覚えていないし、どこに住めばいいのかもわかりません」

 その女はそう呟くと、篠崎千謙を上目遣いに盗み見た。

 その意図を即座に察した千謙は、短く答える。

「ホテルを取ってある」

 すると中村詩乃が笑みを浮かべて割って入った。

「ホテルだなんて水臭いじゃない。あなたたち、以前はあんなに仲が良くてプロポーズまで済ませていたのよ? 住むなら篠崎家であるべきだわ。篠崎夫人や篠崎家のお祖母様だって、彼女が戻ってきたらきっとお喜びになるはずよ」

 千謙は眉をひそめた。そんなつもりは毛頭ない。

 何せ、まだこの女の素性がはっきりしていないのだから。

 一方、女の...

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