第5章

 東京、青山商事本社ビル。

 寛貴は落地窓の前に立ち、手にした調査報告書を握りしめていた。指の節が白くなるほどに強く。

 報告書には、はっきりとこう記されていた。盗作疑惑の黒幕——水野雪乃。

「クリスチャン・ラクロワの代理人が三ヶ月前、東京からの不審な送金を受け取っています。金額は五百万円」

 秘書の田中が傍らに控え、慎重な声で続ける。

「送金元を追跡したところ、水野雪乃名義の隠し口座に辿り着きました」

 寛貴は目を閉じた。こめかみがずきずきと脈打つ。

「もういい」

 寛貴は猛然と振り返り、拳をデスクに叩きつけた。茶器がガチャリと音を立てて震える。

「出ていけ」

 田中は...

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