第180章

彼女は奥歯を噛み締め、無理に口角を引き上げた。

「そう? 鈴木様がそんなに気前が良くて感謝するわ。これで、私のホストや男子大学生の恋人たちに、思い切り買い物をさせてあげられる。さあ、もう行って。私は景色を楽しみたいの」

そう言い残し、水原念はきびすを返し、鈴木家本家とは反対の方向へ大股で歩き出した。

彼女の華奢ですらりとした後ろ姿を見つめながら、鈴木直哉は呼吸が止まりそうなほどの胸の痛みを覚えた。

祖母の言った通りだった。彼が愛しているのは、間違いなく水原念なのだ。

五年前、彼女が自分を見捨てて一人で逃げ延びたのだとしても。この五年間、彼女を愛するべきではなく、憎むべきだと自分に言...

ログインして続きを読む