第192章

水原念が反応する間もなく、何かが彼女の襟元へねじ込まれた。

ぱちり、と瞬きをする。鈴木直哉が次の動きを見せないのを確かめてから、水原念はようやく身じろぎし、襟に押し込まれたそれを引き抜いた。

書類だ。鈴木グループがハッキング被害に遭ったあとの損害を査定した報告書――。

前置きの回りくどい文なんて読む気は起きない。結論だけを追う。40億。

……なるほど。鈴木グループの金は、ずいぶん稼ぎやすい。

「40億って話だったよね?」

水原念は顔を上げて訊ねた。さっきまでの強張りが、明らかにほどけている。

屈辱を与えられるわけじゃない。ただの賠償。そんなもの、簡単すぎる。

それに――これは...

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