第206章

ちょうど誰かと挨拶を交わしていた水原直恭がこちらに気づく。顔色がすっと沈んだ。

水原念に酒を飲ませようとしていた男は他でもない。芸能界で直恭と肩を並べる佐藤社長だった。

――今日、念を連れてきたのは間違いだったかもしれない。

水原家のお嬢さんという肩書が盾になると踏んでいたのに、数杯ひっかけた程度で理性が吹き飛ぶ手合いは、どこにでもいる。

直恭は足早に近づき、佐藤社長の手にあるグラスへ手を伸ばした。

「佐藤社長。彼女はこの業界の人間じゃありません。今日は俺の付き添いで、ちょっと場を見に来ただけです。驚かせないでくださいよ。飲みたいなら、俺が付き合います」

直恭はグラスをつかんで動...

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