第207章

「鈴木家の若奥様は誰か」という話題について、鈴木のおばあさんはもう十分すぎるほど吹聴してきた。鈴木のおじいさんの寿宴でも、その後の病院でも。

けれど、やはり鈴木直哉がメディアを使って広めた効果には到底及ばない。

佐藤社長の言葉を耳にした瞬間、水原念の胸がぐっと詰まった。口元だけを引きつらせ、感情のない笑みを貼りつける。

「夏目家のお嬢様は『将来』の話でしょう。私がいるのは『今』よ。私が鈴木直哉と離婚しない限り、夏目清子は永遠に『将来』の席に座るしかない。……わかった?」

そう言い捨てると、周囲の顔色など気にも留めず、水原念は個室を出た。

ちょうど夜のいちばん賑わう時間帯で、廊下には...

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