第208章

気が狂いそうだった。水原念は手を上げ、そのまま鈴木直哉の頬を張り飛ばそうとする。

鈴木直哉は彼女の腰を支えたまま、反射的に一歩引いた。狙っていたはずの手は頬を外れ、代わりに彼のシャツの襟元を掴む形になる。

――よりにもよって、一番上のボタンが、その指先に押されて外れた。

触れたのは、少し熱を帯びた硬い肌。水原念は感電したみたいに指を引っ込め、気まずそうに鈴木直哉を見上げた。

鈴木直哉が、くっと低く笑う。

水原念は唇をきつく噛みしめた。悔しさで目の奥が熱くなり、うっすらと涙の膜が張る。

その表情に胸がちくりと痛んだのか、鈴木直哉は「やりすぎた」とでも言うように咳払いし、何か言って宥...

ログインして続きを読む