第209章

「この件……鈴木様はご存じなんですか?」

 鈴木直哉を知らない? そんなことがあるのか。

 妻のほうは知っているのに、夫の俺を知らない――珍妙にもほどがある。

 鈴木直哉は薄く目を細めた。さて、この老いぼれは何を企んでいる。

 佐藤賢一は、間を置かずに本音を吐いた。

「奥様。鈴木様はもともとあなたと離婚するおつもりだった。そこへこの一件まで知ったら……もう二度と、あなたを手放さないなんてことはありませんよ。だったら――」

 そして、いやらしく口角をつり上げる。

「今日はうちの親子と、楽しく遊んでいただく。その代わり、こっちも『この男』のことは見なかったことにする。どうです? も...

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