第217章

 鈴木直哉は鼻で笑った。

 南極から北極まで並ぶだと。よくもまあ、でかい口を叩ける。

 そんなに男を侍らせて、過労でくたばりたいのか。

 ……と毒づいた直後だった。水原念が唇をわずかに開き、顔を歪める。まるで、今にも――。

 鈴木直哉の表情が変わり、反射的に言った。

「俺に吐くなよ」

「おえっ……」

 口にしたと同時に、鈴木直哉は水原念の腕をつかんで横へ押しやった。動きは速かった。だが、一歩遅い。

 酸っぱい臭いの吐しゃ物が、スーツの上着にべちゃりと飛んだ。大半は隣のシートに落ち、どろりとした塊になって広がる。

 運転手が気を利かせて路肩に停車した。

 水原念はすぐドアを...

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