第231章

ダメ……。

私は死ねない。

五年前、震災で瓦礫の下に埋もれても死ななかった。鈴木直哉との、望みのない結婚生活を五年も続けても死ななかった。なのに、ようやく鈴木直哉と離婚できる、その直前に――どうして死ねるというの。

今ここで死んだら、私は最期まで鈴木直哉の妻だ。

死んでも、鈴木直哉の傍から逃げられない。

水原念は無理やり呼吸を整え、頭を冷やした。いったい誰がこいつらを買収して、自分を攫わせたのか――必死で記憶をたぐる。

そして、最後に行き着いたのは夏目清子だった。

佐藤賢一の報復なら、狙うのは「私を殺す」ことだけのはずだ。わざわざ「どうやって死なせるか」まで指定なんてしない。

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