第252章

田中修一は口元をわずかに吊り上げ、それ以上は何も言わなかった。

五年前の地震のとき、いったい何があったのか。彼の中では、すでにひとつの推測が形になっている。

おそらく水原念が鈴木直哉を助けた。だが、どういうわけか夏目清子に手柄をすり替えられたのだ。

だから鈴木直哉はこの五年間、水原念にあれほど冷淡だったのだろう。

もっとも、田中修一は深追いするつもりはない。まして、その「気づき」を鈴木直哉に教える気などさらさらなかった。

なぜ教える必要がある?

もう、二人はすれ違ってしまった。

それに、そんなことを伝えたところで、自分の恋敵に追い風を送るだけだ。そんな愚かな真似を、田中修一がす...

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