第254章

「直哉?」と奥村光が驚いたように立ち上がる。「どうして来たの?」

 水原念も腰を上げ、振り返った。

 鈴木直哉を呼んだのは、彼女だ。

 神代夢子と奥村光が自分のところへ来れば、何を言い出すか――それを察した念は、ここへ向かう途中でこっそり鈴木直哉にメッセージを送っていた。

 夢子と光を相手に、自分ひとりでは受け止めきれないかもしれない。だから、少しだけ盾になってほしかった。

 ただ、まさかこんなにも絶妙なタイミングで来るとは思わなかった。

 自分が必死に、彼への愛をねじ曲げて否定している、その最中に。

 さっきの言葉を、どこまで聞かれたのか。

 けれど、聞かれていようがいまい...

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