第260章

水原念。

「……じゃ、じゃあ私……」

彼女もシートベルトを外して車を降りる。

「鈴木様、身分証明書の再発行に付き合ってくださってありがとうございました。お仕事もおありでしょうし、私はタクシーで――」

「誰が帰っていいって言った」

鈴木直哉の不機嫌な声が飛んできた。

「え……?」

水原念はきょとんとしたまま、戸惑いを浮かべる。

「それって……どういう……」

「朝から俺が運転手やってやった。朝飯も食ってない。普通、朝飯くらい奢るだろ」

そう言い捨てると、鈴木直哉はさっさと朝食屋へ入っていく。

背筋の伸びた後ろ姿を見送って、水原念はしばし固まった。遅れて、ようやく状況を飲み込...

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