第264章

水原念は心臓が喉までせり上がるのを感じた。

もし奥村元が人質にしているのが自分なら、身を守る自信はある。けれど今、彼が刃を当てているのは――自分が金も手間もかけて救い出した中村誠美だった。

このまま中村誠美が命を落とすのではないか。そんな不安が、胸の奥で膨れ上がる。

「奥村元、よく考えて。中村誠美は、あなたの奥さんでしょう。脳の腫瘍はもう取り除いた。少し療養すれば、前みたいに暮らせるようになる。ここで彼女を殺したら損をするのはあなたよ。私には何の痛手もない」

水原念は必死に言い聞かせる。

奥村元は鼻で笑った。

「うるせえ。金を出せ。それと車だ。俺とこいつ、二人でここから出る。さも...

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