第267章

神代夢子の顔に、ぱっと喜色が浮かんだ。

「どうして離婚してないの? おばあちゃんに話してごらん。あのクソガキ、後悔したんじゃないの? でもね、たとえ後悔したって、そんなに安く許しちゃだめよ。きっちり一発お灸を据えて、あなたを失うのがどれだけ惜しいことか思い知らせなきゃ」

水原念は気まずそうに神代夢子を見た。

「おばあちゃん、後悔とかじゃないの。私、身分証明書をなくしちゃって……身分証明書がないと、離婚の手続き自体できないの」

「身分証明書をなくした? なくしたの、いいわね。いいわね」

自分が何を口走ったのかに気づき、神代夢子はこほんと咳払いして言い直す。

「違うわ、おばあちゃんが...

ログインして続きを読む