第268章

鈴木直哉は、彼女の落胆した視線を受け止めた。

「なんだよ。俺で不機嫌か? 誰だと思ってた」

――まさか、田中修一じゃないだろうな。

あいつと、そんなに仲がいいのか?

少し会えないだけで、そこまで恋しくなるのか?

「中村さんだと思ってました」水原念は、それ以上は何も考えていなかった。

本当に、魚を届けに来るのは使用人だと思い込んでいたのだ。まさか鈴木直哉本人が来るなんて。

「中村さんは別件で手が離せない」

そう言いながら、鈴木直哉は弁当箱を提げて病床の前まで歩き、サイドテーブルに置く。さらに椅子を一脚運んでベッドの脇に据え、自分が腰を下ろした。

水原念は、その様子をじっと見つ...

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