第270章

翌朝。

夜勤明けの看護師がドアをそっと開け、水原念の様子を確認しようとして――ベッドの上で抱き合ったまま眠っている二人を見つけた。彼女は声も立てずにくすりと笑い、気配を殺して静かに引き返していく。

看護師が去って間もなく。

水原念は目を覚ました。

まだ目を開ける前から、腰のあたりにずしりとした重みを感じる。何かが、彼女の上に乗っている。

眉をひそめて目を開け、反射的に腰へ手を伸ばし、その「重み」をどかそうとして――動きがぴたりと止まった。

……え。

長いまつげ。すっと通った鼻筋。薄情そうに見えるくせに、キスするとやけに厄介な薄い唇。

鈴木直哉じゃないか。

残っていた眠気が、...

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