第275章

「おまえは……」高田風が彼を指さした。

水原念は眉をひそめる。「鈴木直哉、どうしてここに? あなた……」

ぼさぼさの髪。まだ水を滴らせている服。水原念は息をのんだ。

「何してきたのよ、その格好。夏目清子の機嫌を損ねて、雨の中で立ち姿の練習でもさせられた?」

「水原念!」鈴木直哉が歯ぎしりする。「こんな夜中に、病室で大人しく寝てろよ。何をふらふら出歩いてる?」

彼女は強い風が苦手だ。ひとりで病室にいたら怖がるかもしれない。悪夢でも見たら――そんなことばかり考えて、夏目清子のところに少しだけ顔を出したあと、すぐ戻ってきた。

なのに、水原念の病室には誰もいない。目に入ったのは、めくられ...

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