第279章

黒瀬初花は彼女の姿を見ても、捕まったことへの焦りなど微塵も見せなかった。むしろ、いつもの調子で笑いながら言葉を続ける。

「鈴木おじい様と大奥様があなたを庇うのも当然よ。だって、見た目だって仕事だって、あなたのほうがあの浮気相手よりずっと上だもの。目がついてる人なら、誰だってあなたを選ぶわ。あんな、どこへ行っても嫌われる浮気相手じゃなくてね」

それを聞いた夏目清子の顔色が、みるみる最悪の色に沈んだ。

けれど、彼女が憎んだのは口を開いた黒瀬初花ではない。胸の奥に溜め込んだ怨みの矛先は、全部――水原念へと向けられていく。

全部、水原念のせいだ。

あいつが普段から陰で私のことを悪く言ってる...

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