第288章

正確に言えば、水原念の弾んだ笑い声だった。

離婚の話が動き出してから、彼が耳にしてきたのは水原念の冷えた笑いばかりだ。

一緒にいた頃、彼女がこんなふうに心から楽しそうに笑うことなんて、なかった。なのに離婚となった途端、彼女は笑うようになった。

……それでいい。

自分は夏目清子と結婚し、本来背負うべき責任を背負う。水原念は――

ただ、幸せそうに新しい生活を始めればいい。

これから先、彼女が誰と一緒になろうと、きっと自分といるよりずっと笑っていられる。

「水原念……さよなら」

テラスの方角へ向けて、鈴木直哉は声にならない言葉を落とした。

ほどなくして彼はハンドルを切り、車を走ら...

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