第54章

水原念の体は急に凝り固まった。鈴木直哉もここにいるの？

最近、彼女は運が悪すぎるのではないか。なぜ外出するたびに鈴木直哉に遭遇してしまうのだろう。

今や彼らが顔を合わせる回数は、結婚生活が正常だった頃よりも多いくらいだ。

水原念は無意識に外を見やったが、鈴木直哉と夏目清子の姿は見当たらなかった。

田中修一は彼女の視線の先を不思議そうに追いながら尋ねた。「念ちゃん、どうしたの？」

水原念は眉をひそめて彼を見つめた。「何か音が聞こえなかった？」

「いや、何も。ここには私たち二人しかいないじゃないか？どうしたの？念ちゃん、何か聞こえたの？」

田中修一には聞こえていないのなら、きっと自...