第55章

「清子、大丈夫か？」

鈴木直哉が駆け寄り、夏目清子を地面から支え起こした。彼は上から下まで何度も彼女を見回し、怪我がないことを確認すると、怒りの表情で振り向いた。「何てことだ！馬の乗り方も知らないのか？人を踏み殺すところだったぞ、お前は......」

しかし、馬上に座る水原念と、その後ろで彼女を親密に抱き寄せている田中修一の姿を目にした途端、鈴木直哉の言葉は途切れ、表情はさらに険しくなった。

「水原念？田中修一？お前たち、なぜここに？今のは清子を殺すところだったんだぞ、わかってるのか？！」

今や鈴木直哉の怒りは先ほどより増していた。

だが彼自身、今の自分の怒りが、二人が馬で夏目清子...