第109章 自ら棄権

観客席から、再び万雷の拍手が巻き起こった。

橘芹奈は涼しい顔でティッシュを一枚抜き取り、額に滲んだ汗をそっと拭った。

試合終了まで、まだたっぷりと三十分も残されている。他の選手たちが必死に作業を続ける中、橘芹奈はこの時間を、自身の作品の最終チェックに充てることができるのだ。

彼女が最後に提出する完成品が、期待を裏切らないものであることは想像に難くない。

黒田奏多の背筋が、わずかに強張った。

拍手が徐々に鳴り止むと、背後の観客席から漏れ聞こえる話し声が彼の耳に届いた。

「今回のスターライト・モーターズ、てっきり見掛け倒しの飾り物を送り込んできたんだと思ってたけど、意外とやるな!」

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