第211章 彼女は逃げている

黒田奏多も負けじと、自分のグラスになみなみと赤ワインを注いだ。

身分の高い二人の男が、ひどく幼稚な理由で言い争い、そして飲み比べを始めたのだ。

黒田奏多が一杯飲み干せば、氷川昴は二杯で応じる。あっという間にワインのボトルが空になった。

それでも二人の顔はほんのり赤く染まった程度で、今のところどちらが劣勢なのかは全く分からない。

橘芹奈は、二人がまるで水を飲むかのように、ただひたすらに喉の奥へ酒を流し込むのを呆然と見つめていた。

彼女だって酒を飲んだことがないわけではない。強い酒を喉に流し込んだ時の感覚なら知っている。二度と酒など飲みたくなくなるほど、喉が焼け付くように熱くなるのだ。...

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