第275章 彼女がくれるより確実に多い

橘芹奈は、自分がどれほどの時間、縛られていたのか分からなかった。

目隠しをされ、口も塞がれている。時間の感覚なんて、とっくに消えていた。交渉する余地すらない。

まるで、まな板の上で身動きもできない魚――。

いや、魚以下だ。

魚なら跳ねて抵抗くらいはできる。けれど彼女は、ただ死を待つしかないように思えた。

「いち、俺らこのまま待つのかよ? 向こうはさっさとこのクソ女を片づけろって言ってたじゃねぇか」

太い声だが、どこか腰が引けている。橘芹奈は息を殺し、耳を澄ませた。

直後、鈍い衝撃音がした。喋った男が、思いきり平手を食らったのだろう。

「バカだと思ってたけど、ほんとにバカだな。...

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