第5話 反撃

「離婚したいの」

翌朝、私はコーヒーを淹れるよりも先に中島葵に電話をかけた。彼女がまだベッドの中にいるであろう時間だとは分かっていたが、その言葉を声に出すのをもう一分だって待てなかった。

「何?」葵の声は眠そうで、混乱していた。「結月、本気なの?何があったの?」

「陸が浮気してるの」

「でも待って、緊急のコンサルテーションじゃなかったの?鈴木先生との」

私は笑ったが、そこにユーモアはひとかけらもなかった。

「彼女と『学術研究』ですって」

電話の向こうが沈黙した。葵の脳が、私が今告げたことを処理しようと必死に働いているのが聞こえるようだった。

「わかった、ちょっと待って。...

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