第8話 あなたにはがっかりした

小林翔大は私を完全に無視し、その視線は弟の陸に釘付けになっていた。場の空気を張り詰めさせるほどの、激しい視線だった。

「話せ」と彼は命じた。

「これは結月と俺の問題だ」陸は言ったが、その声に力はなかった。「兄さんには関係ない」

翔大は苦々しげに笑った。

「関係ない、だと?」

陸が言い返す前に、翔大の拳が彼の顔面に叩き込まれた。静かな廊下に、乾いた鋭い、決定的な音が響き渡った。

「このクソ野郎が」翔大は唸った。

陸は、やられて黙っているような男ではなかった。自分が悪い時でさえ――いや、悪い時だからこそ――考えるより先に手が出るタイプだった。数秒もしないうちに二人は組み合い...

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