第9話 謝罪を要求する
ここ数ヶ月感じたことのないような集中力で、私は仕事に没頭した。忙しい臨床現場では、自己憐憫に浸る暇などなかった。セッションとケースノートというお決まりのリズムが、驚くほど心を癒してくれた。
陸のことはもう何週間も考えていなかった。そんな時、高橋裕太から電話があった。
「結月さん、こんなこと頼むべきじゃないのは分かってるんだけど」と、彼は苦しそうな声で切り出した。「でも、陸が重度のうつ病で、ここ二週間で二度も入院してるんだ。俺じゃどうにもならない。あいつも自分がやらかしたことは分かってる。だから、たぶん……今あいつに届くのは、君だけなんだ」
裕太は、私が承諾するとは思っていなかった...
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チャプター
1. 第1話 見知らぬ人の呼び声
2. 第2話 記憶の欠片
3. 第3話 壊れた記憶
4. 第4話 彼を信じていた
5. 第5話 反撃

6. 第6話 最終対決

7. 第7話 あなたには関係ない

8. 第8話 あなたにはがっかりした

9. 第9話 謝罪を要求する


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