第1章

春川真希視点

リゾート庭園の人混みをかき分けて進む。誰もが山田裕也の晴れ舞台を記録しようとスマホを掲げている。周りの人たちはひそひそと囁きながら、私に視線を送ってくる。

「うそ、あれ真希じゃない?」

「本当に来たんだ。てっきり怖気づいて来ないかと思ってた」

「これから、すごく気まずいことになりそう」

私は歩き続けた。みんな、私がここでとんでもない騒ぎを起こし、裕也に泣きついて悠里を選ばないでと懇願すると思っている。三日前の私なら、ええ、間違いなくそうしていただろう。三日前の私は、まだ山田裕也が私のクソみたいな人生を救ってくれると信じていた、哀れな女の子だったのだ。

この告白は、裕也が周到に計画したものだ。彼はわざわざ、大勢の友達との卒業旅行の最中をその舞台に選んだ。旅行は約二週間の予定で、私たち十数人は卒業前最後の思い出作りに、ここに別荘を二棟借りていた。そして裕也は、旅行七日目、つまり今この瞬間を、悠里への告白のタイミングに選んだのである。悠里はかなりの金持ちのお嬢様で、その上、本当にいい子だ。裕也が彼女を狙う理由も、私には理解できる。

裕也が用意した舞台の周りには、さらに人が集まってくる。そこら中に撒かれた薔薇の花びら、ストリングライト、そしてどこからか雇われたバイオリン奏者が、ロマンチックで安っぽい雰囲気を醸し出していた。

悠里は、見事な白いドレスをまとってそこに立っていた。完璧に見えた。まあ、彼女は基本的に完璧なのだから当然か。裕福な家族、明るい未来、何もかも銀の匙で与えられてきたような人生。私が決して手に入れられない、すべてを。

裕也は薔薇の花束を手に立っている。完璧にセットされた髪、そしてかつては私を虜にした、自信過剰なあの笑み。でも今の私は……何も感じなかった。

一部始終を撮影している女の子二人の間に割り込む。そのうちの一人が私に気づいた。

「うわ、修羅場が始まる」と彼女は囁いた。

でも、修羅場なんて起こらない。少なくとも、今日は。

裕也は悠里に話しかけていたが、私に気づくと一瞬言葉に詰まり、すぐに得意げな表情を浮かべた。私がすべてを台無しにし、大騒ぎを起こし、そして彼がみんなの前で私を振る、そんな展開を期待している顔だった。

それが彼の考え。それが、みんなの考え。

「裕也」

私が呼びかけると、群衆は、まるで縁日の出し物でも見るかのように私に注目した。悠里の顔には一瞬懸念の色が浮かんだが、裕也はただ……面白がっているようだった。この状況を楽しんでいる。もちろん、彼はそうだろう。

「あなたに、返しに来たものがあるの」私はそう言って、ハンドバッグに手を入れた。

指が、華奢なチェーンに触れる。彼が私の十七歳の誕生日にくれた、あのネックレスだ。当時はそれが何か特別な意味を持つと信じていた。自分が、彼にとって特別な存在なのだと信じていた。

ネックレスは、自分でも美しいと思う。シンプルな金のチェーンに、小さなダイヤのペンダント。裕也は自分の蓄えを全て注ぎ込むほど愚かではなかったから、そう高価なものではない。けれど、私の心を引き留めるには十分なほど、愛らしかった。

「女の子にはダイヤモンドがなくちゃな」これをくれた時、彼はそう言った。あの少し歪んだ笑顔に、十代の私の心はときめいたものだ。「たとえ、小さいやつでもな」

その口調には、あの頃からどこか見下すような響きがあった。でも私は愛情に飢えていて、ほんの少しの愛の欠片にさえ必死だったから、それ以来、毎日欠かさずこのネックレスを身につけてきた。

三日前の夜までは。

私をただの娯楽としか見ていない男を追いかけ続けた先に、どんな未来が待っているのか。あの夢が、それをはっきりと見せてくれるまでは。

「これを、返しに来たの」私はネックレスを掲げ、沈みゆく太陽の光にそれをかざした。

裕也の表情が変わる。面白がる気持ちは消え、困惑が取って代わった。これは彼の脚本通りではない。彼の描く物語では、私が泣いて、懇願して、醜態を晒し、彼が寛大な王子様として、より良い選択肢を鷹揚に選ぶはずだったのだ。

「真希、お前、何を――」

「もう、いらないから」私は彼の言葉を遮り、一歩前に出ると、ネックレスを彼の空いている方の手に落とし入れた。

群衆は静まり返っていた。バイオリン奏者さえも演奏をやめている。

裕也は何が起きているのか理解できないといった様子でネックレスを見つめていた。それから私に視線を戻すと、その顔に怒りが浮かぶのが見えた。

そうよね、よくもまあ私の完璧な瞬間を台無しにしてくれたわね、ってところかしら。

「真希、馬鹿なこと言うなよ」彼は、私に対して我慢強く振る舞っているつもりの時に使う、あの声で言った。「ただ動揺してるだけだろ。後で話そう」

笑いたくなった。私が文字通り彼から去ろうとしている今でさえ、彼には私がもう彼を求めていないということが信じられないのだ。

「話すことなんて何もないわ」私は言った。「さよなら、裕也」

背を向けて歩き出す。人々が私のために道を開けた。背後で、裕也が私の名前を叫んでいる。その声はどんどん大きく、そして高圧的になっていく。

「真希!春川真希、戻ってこい!俺から離れるなんて許さねえぞ!」

「これも何かの駆け引きなんだろ?そんな手は通用しねえぞ!」

「どうせ泣きついて戻ってくるんだろ!いつもそうじゃないか!」

その言葉は、私を打ちのめすはずだった。三日前の私なら、きっと駆け戻って謝罪し、もう一度チャンスをくれと懇願しただろう。でも今の私には、その言葉がただ……哀れに響くだけだった。

私は背筋を伸ばしたまま歩き続けた。背後で、ざわめきが広がっていった。

部屋に戻ると、あたりはもう暗くなっていた。まだパーティーが続いているのが聞こえる。音楽、人々の笑い声、楽しそうな喧騒。

サンダルを蹴り飛ばし、ベッドに倒れ込む。自分がたった今しでかしたことの実感が、じわじわと押し寄せてきた。山田裕也は、十年もの間、私の世界のすべてだった。でもそれは、私が心から彼を好きだったからじゃない。彼が、私の出口になるはずだったからだ。

安定。居場所。私を愛してくれる誰か。

私は、とんでもない勘違いをしていた。

四歳の時、私は春川家に引き取られた。彼らの実子が、公園で行方不明になったのだ。小さな春川愛莉ちゃん。三歳、艶やかな黒髪におっとりした目をした子。保育係が目を離した隙に、まるで霧のように消えてしまったそうだ。

私はその代役になった。愛莉と私はあまり似ていなかったけれど、歳が近かったから、悲しみに暮れる両親は、少なくとも一時的に、家族が元通りになったと偽ることができた。

彼らは私を愛してはいなかった。ただ、いなくならなかった娘がまだいるかのように振る舞っていただけ。私にはその奇妙な考えが理解できなかったけれど、まだ四歳だったから、自分の役を演じるしかなかった。

そして私が十六歳になった時、愛莉が戻ってきた。彼らは私を完全に見捨てた。大学に行く前には、遠い親戚のところに私を厄介払いする話をしているのさえ耳にした。でも、当時の私がいつも裕也を追いかけていたからか、何かの政略結婚に使えるかもしれないと考えたのか、結局は私を家に置き続けることになった。その事実を知った時は、さらにパニックに陥った。

その時から、裕也が私のすべてになった。彼は人気者で、格好良くて、家柄も良い。もし彼が私を選んでくれたら、それは私が価値ある存在だということの証明になる。私がどこかに属しているということの証明になる。

でも裕也は、私が養子であることを知っていた。私がどれほど必死かも知っていて、それを悪用した。私が離れようとすると優しくなり、私が心地よくなると冷たくなる。いつも、希望を抱けるくらい近くに、でも傷つくくらい遠くに、私を置き続けた。

「お前のこと、大事に思ってるのは分かってるだろ、真希」何日も私を無視した後に、彼はそう言った。「でも、俺に期待されても……わかるだろ。俺の親には期待ってもんがあるんだ」

私はなんて馬鹿だったんだろう。

今、私は暗闇の中で横たわり、再びあの夢のことを考えていた。すべてを変えてしまった、あの夢を。

それはあまりにもリアルだった。今まで見たどんな夢よりも、ずっと。細部まで一つ残らず思い出すことができる。湖に落ちた時の、凍えるような水の冷たさ。その後に起きた、恐ろしい出来事の数々。

そして、小野賢治。裕也の住んでいるアパートのルームメイトで、今回の旅行にも来ていた。

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