第6章

「もっと近くに」

秋倉拓の声はいつもより幾分か低く、腕が私の腰に回され、ぐっと引き寄せられた。

その眼差しに、私は思わず息を呑む。普段は見せることのない攻撃性を秘めた、あまりにも真剣な視線だった。

「今夜の会長は、眼つきが少し危ないですよ」

私は軽口を叩いてみたが、不思議なことに彼の提案を拒む気にはなれなかった。

「ツーショットを投稿して、東京中の奴らに俺たちが一緒だってことを見せつけてやろう」

彼が私の顎を指でそっと撫でる。その瞳には、拒絶を許さない強い意志が宿っていた。

なぜだか、普段なら絶対に承諾しないであろうその頼みを、私は受け入れてしまった。

藤原成俊の...

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