第5章

リビングに戻り、ローテーブルに置かれた包装の綺麗なケーキの箱をじっと見つめ——結局、それを拾い上げるとゴミ箱へと放り込んだ。

あいつのそんな見え透いたご機嫌取りなんて、誰が喜ぶものか。

誰が、あいつと瑠璃の三人で、大阪なんかにバイトに行きたがるものか。

昨日、俺に下手に出て機嫌を取ろうとしていた姿。幼馴染と、ぽっと出の「高嶺の花」の間で、どっちつかずの態度を取っていたあいつの様子を思い出すだけで、今となっては滑稽でしかない。

ソファに身を沈めると、胸の奥に言いようのない鬱屈したものが込み上げてくる。これ以上、颯真に心を乱されたくない。私もどこかへ気晴らしに行こう、そう決めた...

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