第8章

颯真の姿を認めた瞬間、私の足はぴたりと止まった。

彼は学校の向かいにあるカフェのガラス窓に寄りかかっていた。ラフなニットにジーンズという装い。顔色は最悪で、目の下にはくっきりと隈が浮かび、全身から疲労感が滲み出ている。

私に気づくと、彼はすぐに体を起こした。

「花梨、座って話せないか? 少しだけでいいんだ」

私は一瞬ためらったが、結局は小さく頷いた。

カフェに入り、隅の席を選んだ。颯真はあまりに自然な様子で、キャラメルマキアートとティラミスを注文してくれた——どちらも、私の好物だ。その些細な気遣いに、胸の奥が少しだけざわつく。

「上手く馴染めてるみたいだな」

彼が先...

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