第4章

 体操競技場に入り、空いている席を見つけて腰を下ろす。周囲は保護者たちで埋め尽くされており、その多くが夫婦連れだった。

 ブブッ、とスマホが短く震えた。大輔からのメッセージだ。急な重要会議が入ったため、駆けつけられないという。

 隣の席の夫婦が、娘の演技について小声で話し合っている。夫が妻に何か耳打ちし、二人で微笑み合っている。かつては私と大輔も、ああして並んで由衣の練習を見守っていたものだ。

「今夜は特別ゲストとして、著名な体操コーチである三浦杏奈さんをお招きしております」

 場内の照明が落ち、スポットライトが舞台の袖に向けられる。そこから杏奈が姿を現した。

 黒い体にぴったりと...

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